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喫茶 大工集団欅(けやき)
〜 店に使われている 木の話 〜
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ベイマツ  (米松) 
【Douglas Fir】


学名 Psedotsuga menziesii
マツ科 トガサワラ属 常緑針葉樹 
原産地は北アメリカです。

ダグラス・ファー(ベイマツの英語名)の由来は、1791年バンクーバー島の西海岸でArchibald Menzies博士によって発見され、その後、1826年に植物学者David Douglasにより再発見され、分類されたことからつけられました。

日本に紹介された米材の第1号です。日本に初めてベイマツが輸入されたのは明治10年です。当時は「メリケンマツ」と呼ばれていたそうです。明治時代らしい名前ですね、何てったって「メリケン・・」ですものね。
当時は主に造船用として使われました、日本に広く市場を持つようになったのは日露戦争以後です。大正時代には関東大震災の復興資材として大量に輸入され、その後の市場発展の端緒となりました。

日本では、材の感じが松に似ていることから、大正時代から「ベイマツ」という名で親しまれていますが、実際は松属ではありません。独立した種族のpseudotsuga menziesii(日本名トガサワラ属)として分類されます。
植物学上はダラス・ファー(Douglas Fir)、学名はシュードツガ(pseudotsuga menziesii)と呼ばれ、それぞれ“ダグラスもみ”“にせもののつが”という意味があります。つまり、名前はベイマツとついていますが、Fir属ですので日本で松というPine族の木ではなく栂属の木なのです。
ベイマツは大喬木で巨大なものは樹高70mになり、直径5mに達します。
ビックリでしょ?!

樹皮は濃い灰褐色で成木の幹には溝が深く現れています。
葉は長さ20〜30mm程度になり軸の廻り一面につき、柔らかな感触を持っています。
球果は7〜10cm程度の長さのものがぶら下がった形になり、先端が3つに分かれた棘状のものが、鱗から突き出ています。

ベイマツは日本で衰退中の栂椹系の木です。
北米産の木材の代表樹種で米材で最も重要な樹種とされています。
分布はカナダからワシントン州、オレゴン州にかけてロッキー山脈より太平洋岸の地域に生育し特に谷筋には巨木が群生しています。
世界中でロッキー山脈より太平洋岸の地域だけに生息している木で単一種です。
オレゴン州では古くから植林をして利用していてますが、原生の木とは違った性質をしています。
北アメリカを代表する木材の一つです。
アメリカ・カナダの伐採量により輸入価格が左右される場合があります。
アメリカ国内の災害の発生によっても、輸入が困難になった事が過去にありました。
1994年にロッキーで4ヶ月もの間、燃え続けた大きな山火事がありました。そのときは輸入量が極端に減りました。しかし当時は日本国内にストックが大量にあったため価格の高騰はあまりありませんでした。
しかし、今は国内のストックは殆ど無いと言ってよいと思います。よって、今、ロッキーで山火事があると・・・。
現在アメリカ・カナダでは、あるサイズ以上のものの輸出が制限されてるため、幅の広い材の入手が難しくなっています。

特徴は、木質は軽く軟らかいです。でも、乾燥すると堅くなります。
木目はまっすぐで春秋の年輪差は明瞭に判別できます。
横にしても強度があるため建築用材の横臥材と言って、横にする材料に多く用いられます。
ログハウスなどにもよく使われます。
木理が細かくまっすぐものを「ピーラー」と言います。
欠点はヤニが多い事と、割れやすい事です。
日本の地松の代替品となっています。

用途としては内装材や建築材、大型構造材、建具材、家具材、合板材(アメリカのベイマツ合板は有名です)に用いられ、現在の木造建築には横物(梁・桁等)として多く用いられています。

ログハウスの丸太はダグラスファー、つまりベイマツが一番多く用いられます。
木を横にして積んでゆくログハウスでは積んである木が捻れると、木と木の間に隙間が空きます。これは建物として致命傷なので乾燥しても捻れない木で、しかも横にしても強い木で作らなければなりません。それには用材の長さも長く(原木は12mの長さで輸入されています)、曲げ強度・圧縮強度・剪断強度が強くなくてはなりません。ベイマツはそのどれもが強く、最適な木なのです。

ここで、木の面白いお話をしましょう。
皆さんは、木が成長するときは真っすぐに上に伸びると思っておいでるでしょう?
でもね、それが違うんですよ。
木は伸びるときに下から見ると、右回りに捻れながら伸びて成長します。
さて、どうして右回りに捻れるのでしょう?
それは地球が回転しているからなのだそうです。遠心力の影響で右回りに捻れながら成長するのだそうです。

ベイマツは70mの高さになると書きましたが、世界一の高木をご存じでしょうか。
70mなんて、チイサイ、チイサイ!!
それではここで、世界一の巨樹をお見せしましょう。
因みに日本一の高木は42mの杉です。
お見せしましょう。

「ジェネラルシャーマン」と名付けられた世界一の巨樹

樹種         ジャイアントセコイア
根元周        31.3m
根元最大直径     11.1m
胸高周        25.3m
樹高         83.8m
枝下         39.6m
地上18mの幹直径  5.3m
最大枝の直径     2.1m
体積         1486.6立方m
推定樹齢       2000〜2700年


(左の写真ではジャイアントセコイアと人の距離は約30mあります)

このアメリカのセコイア国立公園の世界一の巨樹は【ジャイアントセコイア】という木です。
誰が考えたのか漢字では「世界爺」と書きます。大きさといい樹形といいまさにぴったりの文字だと思います。きっと中国の人が考えたのですね。


それでは世界一長命の木は樹齢何年でしょう?

一般に樹齢は、はっきりとした記録があれば別ですが、推定で言われているのが普通です。
たとえば屋久島の縄文杉は通称7200年と言われていますが、学術的には最高でも2100〜2200年程度と推定されています。(内側から採取した資料の科学的計測値は2170年位となっています)

それでは、お見せしましょう。

「メッセーラトレイル」の古木

メッセーラとは長寿の女神と言ったような意味合いがあるようです。最長樹齢の樹(敬意を表して木とは書きません)がこの一角で見つかったことからこの名前が付けられたそうです。

この世界で最も長命の樹とされているのはブリッスルコーンパインという木です。
アメリカのインヨー国有林はシェラネバダ山脈の東側 「フォワイトマウンテン(標高約4340m)」 の山麓に広がり、 そこにブリッスルコーンパインの森があります。標高3300mのあたりに最も多く、4717年(2015年現在)という世界最長樹齢の木はここにあります。
このブリッスルコーンパインは1957年に年輪年代学の分野でサンプル採取に来たゴベルト・マイヤーという学者が発見したものです。そのため推定ではなく直接コアーを抜き取り顕微鏡で年輪を数えるという方法により分かったもので、最も確実な樹齢です。
1インチ(約2.5p)の中に100本の年輪が刻まれているそうです。

実は世界最長樹齢の木は正式には発表されていないのです。
上の写真も『この木が世界で最も長寿の木だろう』と思います、と一応してください。
何故なら、この樹の保護のために写真等は一切公表されていないのです。
もし発表したらイタズラをされるかもしれない、ということで発表されていません。
ですから、ココでは大きさ等は書けません。
この樹のある場所がインヨー国有林の何処かもお教え出来ません。
ご勘弁を。
しかし、上の樹は事実、樹齢4704年の樹です。

写真を提供していただいた某大学の教授によると「この写真だけでは探せない」とのことでした。
ヒントを一つだけ。古木のあるところは北側斜面です。これは水の・・・。  以上です。
横道に大きく逸れました。
ベイマツの続きを書きます。

以前にカナダへ行った時、ヘリコプターでロッキー山脈の上を飛びました。地上を見ると水溜まりが点在し、マッチ棒のような物が無数に散らかって浮いているのが見えました。聞くとそれは湖でマッチ棒はベイマツで長さが12mあるとのことでした。びっくりしましたねー。

ベイマツの続きはこれだけです。

↑ 板目 ↑ 柾目


さて、最後になりましたが、当店では米松はどこに使われているでしょうか。

実は店内には使われておりません。
テラスへ出て頂いて屋根の裏側を見てください。
垂木が乗っている母屋が米松で造られているのです。